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年末年始へ向けて、本編を大プッシュしたい!!
というわけで、本編の進みの悪さに呻ったり、勝手に動くキャラにキレたりと、大騒ぎな状態です。
年が明けるまでには何とか後一人…っ! 後一人の女キャラを出したいんだ! 今の執筆状況じゃ不可能に近いとわかっていても、諦めきれないんだ!
何故ならブログにアップするはずの年賀状に、そのキャラを書きたいから…っ。←
ならもっと早く本編進めとけよ、というツッコみは禁止ですorz
年末まで、どんどん書いて更新できれば、いい……なあ。(あくまで希望でしかないという。
なんだかんだいいつつ、今回の分しか更新できないとかありそうで嫌だ。(待て
第一章---2はこちら→★
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世界が逆転していた。空が地面に、地面が空に。――否、彼らの視界が逆転していたのである。最も、本人達がそれに気づいたときには、視界が逆転したまま地面に叩きつけられてしまったのだが。
「いってぇ」
打ち付けられた頭部を押さえながら、少年達は体を起こす。“時空の狭間”には気づいた時にはいたのに、何故こんなふうに他の世界に飛ばされるんだ。二人とも突っ込みたかっただろうが、言ったところで無駄なのはわかりきっているので何も言わない。打った頭部をさすりながら、同時に視線をめぐらせる。
「でっけぇ建物だけど、なんだコレ?」
ロンが、目の前に立ちはだかる建物の壁を見上げながら首を捻る。首が痛くなりそうなほど高い壁を見上げつつ、アークが答えた。
「城じゃないの?」
「は、城? いや、違ぇだろ。城ってのはこんな形じゃねぇよ」
「いや、城だって絶対」
「違ぇよ。俺、こんなの見たことねぇしよ」
アークは思わず眉を顰めた。高い壁をもう一度見上げる。
白いレンガを丁寧に積み重ねてできた壁、てっぺんが尖った大きな建物。これはどこからどうみても城にしか思えない。しかしロンはそれを全否定し、それどころか見たことも無いとさえ口にする。首を捻りたくなる食い違い。ロンはさして気にしていないようだったが、アークは食い違いの理由を考えた。
そして、わかった。
「あ、そっか」
突然呟いて、手を打ったアークを見遣って「何が」とロンが問う。アークは一人納得して、満足そうな表情をしながら言った。
「何でオレがこれを城って言って、ロンが見たこともないって言う理由」
「は?」
思わず表情を歪め、ロンが首を傾げる。
「俺とロンの住んでる世界が違ってるからだ。ほら、あの子が言ってたじゃん」
あの子とは、時空の狭間にいた紫色の瞳の少女のことをさしていた。
考え込むように黙り込んでいたロンだが、やがてそれを思い出せば納得したように頷いた。確かに彼女がいうには世界というものは数多くあり、アークとロンとが住んでいる世界も別々だと。
おそらく、この後も世界の違いから食い違いが出てくるだろう。色々と面倒なことになりそうだが、考えてみれば国どころか世界まで違うのに、言葉が通じているというのも妙なことである。これは、あの少女の力なのだろうか。
とりあえず、行動を起こさなくては始まらない。アークは服についた土を払いながら、ロンを見遣る。
「なぁ、声聞こえたよな?」
「んぁ? ああ、あの声の奴を助けんだっけ」
小さく頷きを返す。声の主を助ける――とはいっても、あの声だけでわかることは少なすぎる。一つはあの声は、女の声だったということ。もう一つは、酷く切羽詰った状況に追い詰められているだろうということだ。
生々しく耳に残っている少女の叫び声を思い出し、アークは眉を顰めた。少女が必死に叫んでいた“殺して”という訴えを、アークは聞かなかったものにしてしまいたいほどだった。
「ミー。早くいらっしゃいな」
唐突に、女性の声が聞こえた。あまりに唐突なもので、二人は飛び跳ねるくらいに驚いた。動揺を隠しきれず、鼓動の速度が増した胸に手を当てながら小声で言葉を交わす。
「ちょ、おい。誰か来たらヤバくねぇか!?」
「当たり前だろ! と、とにかく隠れろっ」
二人は慌てながらも近くの茂みの中に入り込んで、姿を隠す。すぐ近くを通る足音に緊張はピークに達したが、足音の人物は二人には気づかなかったようで、そのまま行ってしまった。
足音が遠ざかるまで二人は息を殺し、必死に身を潜めた。そして全く足音が聞こえなくなるのと同時に、二人は溜息をつく。だがそれが逆に仇となった。極度の緊張から解放された事で、気が緩んでいたのだろう。二人は警戒心も持たずに、茂みから抜け出し――。
「お待ちください。お一人では危な――――え?」
「「え?」」
実にマヌケな光景だった。
何の警戒心もなく茂みから抜け出した二人の目の前には、洗濯された衣類の入った大きな籠を抱える少女が一人、目を丸くして、アークとロンを凝視しているではないか。当然二人も少女を見据え、呆然とする。三人の間には妙な空気と沈黙が流れた。
…………。
暫くして、少女は抱える籠をより強く抱いて、小刻みに震えだした。引き攣るように口端が上がり、そこから叫び声が響き渡る。はずだったが。
「しーっ、しーっ!」
寸前でロンが、少女の口を手で塞いでそれを止めた。少女は口を塞がれても大声を上げようと抵抗したが叫ばせるわけにはいかない。突然城の敷地内に見ず知らずの人間が入っていたら叫ばずにはいられないだろうが、彼らは叫ばれては困るのだ。人が集まってきたら、誤魔化しがきかなくなる。
必死に少女の口を塞ぎながら、ロンが慌てた様子で言う。
「お、俺ら怪しいもんじゃねぇから」
しかし、そんな言葉で納得するわけはない。あまりに抵抗するもので、ロンが口から手を離してやると、解放された少女は二人をきつく睨むように見据えながら声を荒げた。
「なんなんですか、貴方たちっ」
「えーっと、それは説明すると長くなるっていうか……」
「無断で城に入り込んで、何をするつもりなんですか!」
「ちょ、声でかいって!」
ロンが慌てて、再び少女の口を塞ぐ。
辺りに人が来ていないか確かめると、ふと目が合ってしまった。四十半ばくらいの年齢の初老の女性が、瞬きをしながらアークとロン、そして口を塞がれた少女を見ていたのである。
客観的に見ればそれは、言い逃れしようがないとんでもない光景だった。どうも誤魔化しできない状況で、アークが表情を引き攣らせながら言ったのは、これだった。
「こ、こんにちは」
引き攣った笑顔だったが、中年女性は不思議そうな表情のまま、それでも「こんにちは」と返してきたのであった。
はっとしたようにロンが少女を解放すると、少女は中年女性に駆け寄った。そして、明らかに警戒心の強い視線を二人に向けたが、アークは軽く苦笑を浮かべながら少女と初老の女性に頭を下げた。
「勝手にお城に入ってしまって、ごめんなさい」
「それはそうと、どうして城に入り込んだりしたのかしら?」
初老の女性からの問いかけに、ロンが答えを見つけられず、どうしようかと隣のアークを見遣る。しかしアークは戸惑った様子もなく軽く肩を竦めて見せた。
上に羽織っていた黒いコートのポケットに手を入れると、短剣を取り出した。一体どこに持っていたのか、ロンはぎょっとした。
「子供のイタズラで、これが城の中に入ってしまって……それで、拾おうと思って壁を登って」
「この壁を?」
まあ、と驚いたように中年女性が目を丸くする。アークが示した壁は、城の周りをぐるりと囲んでいると思われる高い壁だった。驚くのも無理はないが、実際アークはこの程度の壁なら簡単に登れる。取り出した短剣をアークが再びポケットに戻すと、問いかけが投げつけられた。
「でも、何故わざわざ壁から? 門番の方に言えば、取ってもらえるのに」
問いかけたのは、初老の女性に駆け寄っていった少女だった。蜜柑色の服に白いエプロンをしているところを見ると、少女はこの城で働く侍女あたりだろうと予想が付く。
鋭い問いに、今度こそ言い逃れできないと思ったロンだった。しかし当のアークはきょとんとした表情を浮かべて、少女を見つめていた。やがて感心するように両手を合わせると、
「ああ、そういう方法があったんですね」
と言うのだ。呆気に取られたのはロンである。
――こいつは、さらりと嘘ばっかり吐きやがって。
「すいません。実は遠い田舎の国からやってきたもので、そういう勝手がよくわからなくて」
「え、あ、いえ。それならいいんです。こちらこそごめんなさい」
しゅんと肩を落として遠慮がちに言ったアークに、少女はそれ以上追及ができず、逆に謝ってしまった。正直謝られてしまうとまでは思っていなかったのでアークにも多少の罪悪感はあったが、仕方がない。
嘘も方便ということだ。
「それでは何故レイド王国に? 観光ですか?」
次にそう尋ねたのは、初老の女性だった。話の流れからしてレイド王国というのがこの国の名のようだ。当然次の答えもアークに頼ろうとしたロンだったが、当人が何かを考え込んでおり質問さえ聞いていないようだった。上手い嘘が思い浮かばないロンは、とりあえず曖昧に笑って、
「えーっと、まぁ観光みたいなもんで」
と適当に答えておく。中年女性が複雑そうな表情を見せたが、気づかないふりをして目を逸らすことしかできない。
空の色が変わりだした。太陽の位置が傾いている。
アークは空の変化に目を細めると、息を吸い込んだ。
「ああぁぁぁ――――っ!!」
吸い込んだ息を盛大に使って、アークは思い切り叫んだ。いきなり大声を上げたアークに、傍らにいたロンが動揺を隠せないまま問いかけた。
「な、なんだよ」
「ごめん、ロン……財布、落としたみたい」
「は?」
間抜けな声を出して眉を顰める。そんなロンの服を掴んで、アークは続ける。
「ごめん、本当にごめん! あの財布には、これからの宿代も飯代も全部入ってたのに……っ」
「え、あ、あのさ」
何のことだ? と言おうとしたロンの腕を、強く掴む。急に走った痛みに思わず表情を歪めたが、アークが「黙ってろ」と口パクで指示を出す。何の意味があるのかはロンには少しも分からなかったが、言うとおり黙っている事にする。
すると、あのう、という遠慮がちな声がかかる。エプロンを身につけた少女だった。
隣の初老の女性も、不安そうな面持ちで二人の様子を窺っていた。
「お財布、落としてしまったんですか?」
「はい、そうみたいです」
アークが落ち込んだ様子をつくって頷く。すると少女は初老の女性を振り返った。中年女性は目を細めてから、了承するように頷き、言ったのだ。
「宿代も夕飯代ないのなら、今夜はうちにお泊りになりなさいな」
「いいんですか?」
すかさずアークが目を輝かせる。中年女性は笑顔を浮かべて頷いた。
表情を引き攣らせたロンが、こそこそとアークに耳打ちする。
「お前、泊めてもらうのが狙いだっただろ」
「わかった?」
「金なんて最初から持ってねぇし。最悪だな、お前」
「そう言うなよ。好きで嘘ついてるわけじゃないの。日も暮れてきたし、泊まるとこなきゃ困るだろ」
今日一日であの声の主を助けるなんて、無理な話なのだから。
「そりゃそうだ」
はっきりと年齢を聞いたわけではないが、自分より確実に年下だろうアークに、ロンは心底感心してしまう。一体何をどこまで考えて行動に移しているのだろうか。
到底ロンには真似できない芸当である。嘘もここまでくると尊敬に値する。
小声で会話を交わす二人の様子を見て、中年女性はにっこりと微笑んだ。
「国王には私の方から言っておくわ。この城には余っている部屋がたくさんあることだし。ミー、貴方はお二人の部屋とお世話をお願いね」
「はい。王妃様」
…………はい?
再び間が空き、少年二人が呆然とする。
流石のアークも、そこまでは頭が回っていなかったのだろう。呆然としたままエプロンを着た少女を見てから、中年女性を見上げる。瞬きを何度も何度も繰り返して、凝視する。
決して派手とはいえない、寧ろ地味という部類が近い、ドレスを纏った初老の女性。小さい家でも構わないから、とりあえず寝床が欲しかっただけだった。しかしその女性はこの城、と口にし、少女は彼女を王妃様と呼んだ。
「お、王妃……様……?」
「ええ。私、レイド王国の国王の妻のアリアと申します」
穏やかな笑みを浮かべた初老の女性――否、王妃様は丁寧に頭を下げた。
二人の少年は、間抜けに口を開いたまま暫く何も言えず、ようやく口にした言葉は、二人の声がぴったり重なった、驚き丸だしのマヌケな叫び声だった。
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